※2026年9月27日時点の情報です。2027年4月の施行までに、予算や地域の体制などが変わる可能性があります。
2027年4月1日から、医療的ケア児を支える法律の対象が広がります。 医療的ケアが必要な成人や、重症心身障害のある人、その家族も法律に明記されます。暮らしや仕事、住まい、相談などを支えるための規定も増えます。
ただし、法律の対象になることと、個別の福祉サービスをすぐに利用できることは別です。まずは「法律で何が変わるか」と「地域で何を確認する必要があるか」を分けて見ていきます。
| 確認したいこと | 法律の改正で変わること | 地域や個別の制度で確認すること |
|---|---|---|
| 対象 | 医療的ケア児等、重症心身障害者とその家族を明記 | 自分や家族がどの定義に当たるか |
| 支援 | 日常生活、医療、就労、住まい、学びなどの施策を拡充 | 利用できる事業、支給要件、事業所の受け入れ状況 |
| 相談体制 | 支援センターを設置できる自治体の範囲が広がり、地域協議会も設置可能に | 住んでいる地域の窓口と、実際の相談範囲 |
対象は「18歳になった元医療的ケア児」だけではありません
この改正にあわせて、法律の名称も「医療的ケア児等及び重症心身障害者並びにそれらの家族に対する支援に関する法律」に変わります。[衆議院の改正法案要綱]
今回の改正で、法律上の「医療的ケア児等」には次の人が含まれます。
- 医療的ケア児
- 以前は医療的ケア児で、現在も日常生活や社会生活のために継続して医療的ケアが欠かせない人
- それ以外で、日常生活や社会生活のために継続して医療的ケアが欠かせず、そのために自立した生活が難しい状態にある人
さらに、重度の知的障害と重度の肢体不自由が重なっている「重症心身障害者」も対象です。この定義には、児童である「重症心身障害児」も含まれます。医療的ケアを必要とすることは、この定義の条件にはなっていません。複数の定義に当てはまる人もいます。[改正法の新旧対照表]
ここで気をつけたいのは、「現行法は18歳未満だけ」という説明です。現行法の「医療的ケア児」には、18歳以上で高校などに在籍する人も含まれます。また、現行法にも成人後の支援を考慮する基本理念があります。今回の改正は、その考えをさらに広げ、成人を含む対象者や支援施策を具体的に書き込むものです。[改正法の新旧対照表]
医療だけでなく、毎日の暮らしや仕事も法律に書かれます
改正法には、医療的ケア児等と重症心身障害者が、希望する地域で暮らせるよう支える考え方が記されています。本人の意思を最大限尊重することも基本理念です。
具体的には、一時的な預かりや夜間の支援、通学などの移動、18歳を過ぎても必要な医療につながるための措置、就労の機会、住まいの確保、当事者や家族同士の交流、生涯学習などが挙げられています。保育所や学校での支援、医療的ケアに対応できる人材の確保も含まれます。[衆議院の改正法案要綱]
これは、国や自治体などが支援体制を整えるための規定です。ここに名前が挙がったサービスが、2027年4月からすべての地域で一斉に利用できるという意味ではありません。
相談先の仕組みも広がります
現在の「医療的ケア児支援センター」は、改正後に「医療的ケア児等支援センター」となります。都道府県知事に加えて、指定都市、中核市その他の政令で定める市、特別区の長も設置できるようになります。地域の支援体制を話し合う「医療的ケア児等支援地域協議会」も設置できる規定ができます。センターには、相談や情報提供に加えて、個別避難計画への協力や災害時の情報提供なども位置づけられます。[衆議院の改正法案要綱]
「設置できる」という規定なので、どの市にも新しいセンターができるとは限りません。今ある相談先を探す場合は、こども家庭庁の支援センター一覧があるページから地域の窓口を確認できます。成人について今どこまで相談を受けているかは、各窓口に確認が必要です。
18歳を迎えたら、支援の「引き継ぎ」も大切になります
子どもの時期と成人後では、医療、学校、日中の過ごし方、利用する福祉サービスなどの窓口や仕組みが変わることがあります。医療的ケアが必要な成人の支援を調べた研究報告書も、18歳以降の生活を課題として挙げています。[厚生労働科学研究の報告書]
今回の改正は、その間を切れ目なく支えるための土台になります。一方、法律だけで、地域の事業所や支援者の不足がすぐに解消するとは言えません。衆参両院の委員会も、人材の確保や地域差への対応を政府に求めています。[衆議院の委員会決議、参議院の附帯決議]
本人がどこで、どう暮らしたいか。今の医療や支援を誰と引き継いでいくか。そうしたことを、本人・家族だけで背負うのではなく、現在つながっている医療機関や相談支援の担当者、自治体の窓口と一緒に確かめられるとよさそうです。
2027年4月に、使えるサービスも一斉に増えますか?
そこはまだ分けて考える必要があります。 法律は2027年4月1日に施行されますが、個別のサービスには別の制度の利用要件や支給決定があります。地域の事業所が対応できるかどうかも関わります。[衆議院の審議経過、改正法案要綱]
こども家庭庁は、2027年度に必要な予算を求める「概算要求」で、支援センターへの助成対象を中核市や特別区にも広げ、地域協議会の費用の一部を補助する案を示しています。これは予算の要求段階であり、確定予算ではありません。また、今回の法改正を踏まえた障害福祉計画の基本指針の見直しも、2026年9月時点では改正案の段階です。[こども家庭庁の2027年度概算要求、厚生労働省の第8期障害福祉計画ページ]
個別の利用について知りたいときは、サービス名だけで判断せず、住んでいる自治体で対象条件、申請先、実際の提供状況を確かめる必要があります。
「対象は約7万人」という報道は?
共同通信は、改正後の対象者が約7万人になると報じています。研究班に参加する医師は、自治体の公開議事録で、医療的ケア児が約2万人、成人になった医療的ケア者が約2万人、成人後に医療的ケアが必要になった人が約2万人、医療的ケアを必要としない重症心身障害児者が1万人弱という概数を説明しています。[共同通信の配信記事、松戸市の会議録(11ページ)]
ただし、確認できた研究報告書は医療的ケアが必要な成人の一部についての推計で、約7万人全体の集計表ではありません。各区分と改正法上の定義の対応や、重複をどう扱ったかも確認できていません。この記事では、約7万人を確定した人数として扱いません。
こども家庭庁が公表する在宅の医療的ケア児(0〜19歳)の推計は、2025年に21,496人です。ただし、こちらは対象範囲の違う統計です。「2万人から7万人に増えた」と単純に比較する数字でも、支援量が3倍になるという数字でもありません。[こども家庭庁の医療的ケア児の現状]
まとめ|法律の変化と、地域での実現を分けて見る
今回の改正では、医療的ケアが必要な成人や重症心身障害のある人も、家族とともに支援対象として明記されます。暮らし、学び、仕事、住まい、相談を支える規定も広がります。
その一方で、利用できるサービスは、別の制度の条件や地域の体制によって変わります。2027年4月の施行と、その後に必要な支援が実際に届くことを分けて見ていきたいところです。
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