親子で遊ぶ様子を調べたところ、親のスマホなどの使用と、子どもが親へ向けたコミュニケーションの合図の見逃しには関連がありました。機器使用と見逃しの関連が強い親子では、保護者が回答した質問票による、子どもの言葉の理解・発語の得点も低い傾向が報告されました。 ただし、機器使用が言葉の発達を遅らせると証明した研究ではありません。[1]
ここでいう「合図」は、子どもが親へ何かを伝えようとするコミュニケーションのサインです。例えば、おもちゃを差し出して親に見せようとする場面を思い浮かべると分かりやすいでしょう。この場面は説明のための例で、論文に報告された具体的な観察例ではありません。
子どもと遊んでいるとき、スマホの通知が気になる。調べものや連絡も必要で、ずっと画面を見ない生活は現実的ではありません。この記事では、親を責める材料としてではなく、親子のやりとりを考える手がかりとして研究を読みます。
13〜18か月の子どもと親107組を、遊びの場面で調べた
2026年10月4日に『JAMA Pediatrics』でオンライン公開された研究です。カナダで参加条件に合った親子119組のうち、解析対象となった107組について、研究室で25〜30分間遊ぶ動画を分析しました。親が機器を使った時間と、子どもからの合図を見逃した場面を、秒単位で記録しています。[1]
言葉については、保護者が語彙の質問票に回答しました。子どもの年齢を考慮した、その時点での「理解する言葉」と「話す言葉」の得点です。今後の発達の速さを調べたり、発達の遅れを診断したりしたものではありません。[1]
遊び中の機器使用と「合図の見逃し」、言葉の得点に関連
研究者は、二つのことを順に調べました。
まず、遊びの動画から、機器使用と合図の見逃しの時間的な関係を調べました。原著の図1では、「一つ前の時間区間で機器を使っていた場合」と「使っていなかった場合」を比べ、使用があった場合のほうが、合図の見逃しが起きやすいと示しています。ただし、その度合いは親子によって異なりました。[1]
ここは区別が必要です。原著の本文・図では、合図を見逃した瞬間も機器を使っていたのか、すでに機器を置いていたのかを分けた結果は示されていません。そのため、「使いながらの見逃し」なのか「置いた後の見逃し」なのかは、この報告からは判断できません。「機器を置いた後も親の反応が鈍る」と確認した研究ではありません。[1]
次に、親子ごとの「機器使用と合図の見逃しの関連の強さ」と、子どもの言葉の得点を比べました。この関連が強い親子ほど、保護者が答えた質問票で、言葉の理解・発語の得点が低い傾向がありました。[1]
つまり、注目したのは、スマホなどの使用と、子どもからの合図を見逃すことが、どの程度一緒に起きていたかです。親子の仲のよさを「結びつき」として測った研究ではありません。
「スマホを見た回数」と「発達の遅れ」を直接結びつけた話ではありません。

今回の研究から、スマホの禁止や安全な時間は決められない
一時点を調べた観察研究なので、原因と結果の向きは分かりません。親の心身の状態など、測定していない要因も関係し得ます。研究室での短い観察で、参加した保護者は大学卒が多く、あらゆる家庭にそのまま当てはめることもできません。[1]
したがって、「1日何分までなら安全」「スマホをやめれば言葉が増える」といった基準や効果は、この研究からは出せません。家庭ごとの困りごとを、今回の結果だけで機器使用のせいだと判断しないことも大切です。
暮らしでは、子どもの合図に気づいて返す機会をつくる
日常の関わりを考える参考として、ハーバード大学の発達研究センターは、子どもの視線や声、しぐさに大人が応じる「サーブ・アンド・リターン」を紹介しています。子どもが関心を向けたものに気づき、反応を返し、次の反応を待つやりとりです。[2]
たとえば、積み木を差し出されたら「積み木だね」と返す。指さした先を一緒に見て、子どもが次にどうするか少し待つ。これは説明のための例で、今回の研究が効果を検証した方法ではありません。
その機会をつくるために、「一緒に遊ぶ間だけ通知を静かにする」「用事が済んだら画面を閉じる」といった工夫を試すことはできます。これも記事としての提案であり、言語発達への効果がこの研究で確かめられたわけではありません。
同センターの資料も、こうした関わりを一日中続ける必要はないと説明しています。[2] また、大人のストレスや生活上の負担への支援も重視しています。[3] 目指すのは完璧に反応し続けることではなく、日々の中で応じ合う機会をつくることです。
親子のやりとりに注目する結果。ただし、原因までは分からない
今回の研究は、親がスマホなどを使うことと、子どもからの合図を見逃すことの関係に目を向ける手がかりになります。一方で、家庭や子ども一人ひとりの言葉の発達を、スマホだけで説明することはできません。機器を使うかどうかだけでなく、子どもとのやりとりをどうつくるかという視点で受け止めたい結果です。
出典:原論文と、日常の関わりを考えるための資料
[1] Keskin G, McArthur BA, Marsh A, et al. “Missed Child Communication Cues During Parent Technology Use and Child Language Development.” JAMA Pediatrics. 2026年10月4日オンライン公開。DOI: 10.1001/jamapediatrics.2026.4728。原論文
[2] Center on the Developing Child at Harvard University. “5 Steps for Brain-Building Serve and Return.” 解説と保護者向け資料
[3] Center on the Developing Child at Harvard University. “A Guide to Serve and Return: How Your Interaction with Children Can Build Brains.” ガイド
確認範囲:原論文の本文・図1・図2と、上記の保護者向け資料を確認してまとめています。


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