何度言っても伝わらない、癇癪(かんしゃく)にイライラ、うちの子何か違う?〜『様子を見ましょう』の先にある児童発達支援センター

児童発達支援センターで、子どもが表情と数字の段階表があるボードから絵カードを選ぶイラスト 福祉×子育て
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何度言っても、伝わらない。

着替えて、と言っただけなのに癇癪(かんしゃく)が始まる。

気づけば今日も怒ってばかりで、寝顔を見ながら「またやっちゃった」と落ち込む——。

もしいま、そんな毎日の中にいるなら、まず伝えたいことがあります。

それはしつけの失敗でも、愛情不足でもないかもしれない、ということです。

この記事では、発達が気になる子とその家族のための場所「児童発達支援センター」について、福祉の現場で働く私たち夫婦の実感を交えてまとめました。

父親と母親が子どもの発達の気がかりに一緒に向き合い、児童発達支援センターへ相談し、遊びを通した支援や保護者への助言、園との連携、就学への橋渡しにつながる流れを描いたイラスト

「何度言っても伝わらない」は、親のしんどさの入口になりがちです

親だって、怒りたくて怒っているわけではないんですよね。本当に。

同じことを10回言って、10回伝わらない。

手を変え品を変え、絵で見せたり、ごほうびを用意したり、時には泣き落としまで試して、それでもうまくいかない。そうなると、人間ですから、イライラは積もります。

そして、つい強く言ってしまう。強く当たってしまう。その後にやってくる自己嫌悪が、また親を追い詰めていく——。

現場にいると、この苦しいループの中で必死に頑張ってきた親御さんに、たくさん出会います。中には、強く当たってしまってから「やりすぎてしまった…」と気づくご家庭もあります。

でも、そのピンチはチャンスになるかもしれないです。

支援の現場が一番心配しているのは、「誰にも相談できないまま親子で追い詰められていくこと」のほうです。

気づくきっかけは、家庭それぞれです

発達の気がかりに気づくきっかけは、本当に家庭それぞれです。

現場でよく見るパターンを挙げてみると——

  • 1歳半健診・3歳児健診などで、専門職から「少し様子を見ましょう」と言われた
  • 保育園・幼稚園の先生から、集団の中で溶け込みづらい様子を教えてもらった
  • 親自身が「うちの子、何か違う?」と感じて、夜な夜な調べたおした
  • 「子どもってこんなものだよね」とおおらかに構えているうちに、就学したら行動が荒れに荒れた

親御さんのスタンスに何が正解ということはありません。

おおらかに構えられるのは素敵なことですし、調べまくるのは真剣な証拠です。健診で言われてもピンとこないことだってあります。

どのルートだったとしても、責められるようなことではありません。

ただ、現場の実感としてひとつ言えるのは、「様子を見ましょう」と言われたまま、次の一歩がわからずに時間だけが過ぎていくご家庭が少なくない、ということです。

その「次の一歩」の有力な選択肢が、児童発達支援センターです。

児童発達支援センターは「発達が気になる子と家族」の地域拠点です

対象は主に未就学の子どもたち

児童発達支援は、主に0歳から就学前までの、発達に気がかりのある子どもが対象です。

大事なのは、診断がついていなくても相談できること。

「発達障害と診断されたら行く場所」ではなく、「気になる段階から相談していい場所」です。

「センター」と「事業所」、2種類あります

実は、児童発達支援には「児童発達支援センター」と「児童発達支援事業所」の2種類があります。

ざっくり言うと、センターは地域の中核となる拠点(2024年の児童福祉法改正で、その役割が法律上も明確になりました)、事業所は日々の療育に通う身近な場所で、数も事業所のほうがずっと多いです。

お住まいの町にセンターがなくても、事業所はあるということが多いので、「センターが近くにない=使えない」ではありません。

利用には「受給者証」、費用は満3歳から就学前まで無償です

通所して療育を受けるには、市区町村に申請して「通所受給者証」を取得します。

療育手帳や診断書が必須というわけではなく、必要性が認められれば発行される仕組みです(運用は自治体によります)。

費用は原則1割負担で、世帯所得に応じた月の上限額(0円/4,600円/37,200円)が決まっています。

そして満3歳になって初めての4月1日から小学校入学までの3年間は、利用者負担が無償化されています。

出典
無償化にあたり、新たな手続きは必要ありません。
厚生労働省「就学前障害児の発達支援の無償化について」より

最初の窓口は、市区町村の障害福祉・子育て担当課です

「どこに行けばいいの?」となったら、まずはお住まいの市区町村の障害福祉窓口か子育て相談窓口へ。「子どもの発達のことで相談したい」の一言で、地域の相談先や施設につないでもらえます。

別の記事で紹介した子ども家庭支援センター系の窓口から入っても、ちゃんとつながります。

具体的には、こんなことをしてくれます(一例)

「療育」と聞くと構えてしまうかもしれませんが、中身はもっと具体的で、生活に近いものです。

① 発達の相談と「見立て」をしてくれます

いま何に困っていて、その背景に何がありそうか。専門職が子どもの様子を見ながら、一緒に整理してくれます。

「原因探し」ではなく「作戦会議」に近い感覚です。

② 遊びや生活を通じた療育をしてくれます

着替え、食事、順番を待つ、気持ちを言葉にする——生活の中の「できた」を増やす練習を、遊びを通じてやってくれます。

子どもにとっては「楽しく通う場所」になっていることが多いです。

③ 親に「関わり方のヒント」をくれます

個人的には、ここが一番大きいと感じています。

同じ「伝える」でも、その子に伝わりやすい伝え方がある。それを教えてもらえると、家庭でのイライラのループが少しずつ変わっていくことがあります。

子どもの練習の場であると同時に、親が楽になるための場所でもあるんです。

④ 保育園・幼稚園と連携してくれることがあります

園での様子を共有したり、園の先生に関わり方を伝えたり。

家庭・園・支援先が同じ方向を向けると、子どもはぐっと過ごしやすくなります。

⑤ 就学に向けた橋渡しをしてくれることがあります

就学前の相談や、学校への引き継ぎなど、小学校生活へのバトンタッチを手伝ってくれることがあります。

ただ、こうした支援の中身や手厚さには自治体差・施設差があります。ここに挙げたのは「あるかもしれないメニューの例」と受け取ってください。何ができるかを教えてもらうこと自体が、最初の相談の立派な中身になります。

相談した内容は、職員に法律上の守秘義務があり、外部に漏れることはありません。「相談したことが周りに知られてしまうかも」という心配をせずに、話してもらって大丈夫です。

「こんな様子なんです…」は相談の入口になることがあります(例)

現場でよく相談につながる様子を、いくつか挙げてみます。

  • 癇癪(かんしゃく)が激しく、手を尽くしてもおさまらない
  • 遊びや行動の切り替えがとても苦手
  • 特定のものごとへのこだわりがとても強い
  • おしゃべりが一方的だったり、言葉がゆっくりだったり
  • 家では話せるのに、園など特定の場面では話せなくなる(場面緘黙)
  • とにかく動き回っていて、じっとしているのが難しい
  • 手先が極端に不器用で、着替えや道具の扱いに苦労している

大事なことなので強調しますが、当てはまる=(発達)障害、ではありません。

成長のスピードには幅がありますし、その時期だけの姿ということもよくあります。

このリスト(例)は「チェック項目」ではなく、「よくある相談例」として受け取ってください。

発達検査は「優劣のテスト」ではなく「得意と苦手の地図」です

相談を進めていくと、田中ビネーやWISC(ウィスク)といった発達検査の名前を聞くことがあるかもしれません。

これは、賢いかどうかを測るテストではありません。

その子の得意と苦手の「凸凹(でこぼこ)」を地図にするものです。

全体の力は十分あるのに、ある部分だけ極端に苦手——そういうバランスの差が大きいと、本人は見た目以上に疲れたり、困ったりしやすいんです。

凸凹の地図が手に入ると、「なぜあの場面でつまずくのか」の説明がついて、周りの関わり方が変わります。

責めるための検査ではなく、その子を分かるための検査、というのが現場の感覚です。

(誰しも凸凹はありますし、当の私もなんらかの凸凹があります…というか凸凹がない人はいないと思います)

早くつながれた子も、後々繋がれた子も、現場で見てきました

正直な実感を書きます。早めに支援につながっていた子が、小学生になってから思ったより落ち着いて過ごせている——そういう姿を、現場で見てきました。早くつながるほど、打てる手と選べる道が増えるのは、たしかにあると思います。

一方で、仕事が忙しくてなかなか通えなかったご家庭、周りが勧めても踏み出せなかったご家庭、通い始めるのが遅くなって後から苦労したご家庭も見てきました。それぞれに事情があって、どれも責められることではありません。

だから、こう伝えたいです。「早くしないと手遅れ」ではなく、「気づいた今日が、一番早い日」

いつから始めても、意味がなかったということはありません。

まとめ——「しつけの問題」と抱え込む前に

何度言っても伝わらないのは、あなたのしつけのせいではなく、「伝わり方がその子仕様じゃなかっただけ」かもしれません。それを一緒に探してくれるのが、児童発達支援センター(と事業所)です。

まずは「自治体名+児童発達支援」で検索してみる、健診のときに聞いてみる、市区町村の窓口に電話してみる。どれか1つで十分です。

ちなみに、「どこに相談すればいいか分からない」という段階なら、質問に答えていくだけで相談先の候補がわかる無料ツールも作っています。よかったらどうぞ。

「どこに相談すればいいかわからない」を解決したくてツールを作りました

そして、お子さんが小学生になったら、放課後の支援は「放課後等デイサービス」にバトンタッチしていきます。こちらは別の記事にまとめてあります。

放課後等デイサービスの使い方〜対象・費用・受給者証の段取りをまとめました〜

子どもの年齢に合わせて読める、シリーズの他の記事もどうぞ。

妊娠・出産、寝られない、つらい、誰に相談すればいい?〜親のことも子のことも相談できる子ども家庭支援センター

なぜだか学校に行きたくない、朝になると不調になり、いつしか昼夜逆転生活に。休ませていいの?〜学校の外にある居場所『教育支援センター』

どこに相談すればいいか、もう迷わなくていい〜3つの窓口をつなぐ『こども家庭センター』と、連携という安心の仕組み

学校生活の中での居場所「教育支援センター」については、シリーズの別記事で書く予定です。

参考・出典
・こども家庭庁「利用者負担の仕組み
・厚生労働省「就学前障害児の発達支援の無償化について
・こども家庭庁「障害児支援施策」(児童発達支援センターの中核機能・令和6年改正)

制度は自治体によって運用が異なり、改定されることもあります。注意深くまとめていますが、誤りがあれば都度修正します。実際の利用にあたっては、お住まいの市区町村の窓口など関係機関にご確認いただけますと安心です。

※この記事は、夫婦の現場経験をもとに書いています。

ゆるきりん🦒

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