同じ課題でも、すぐに答えられるときと、少し時間がかかるときがあります。
今回紹介する研究では、ADHDの診断歴がある子どもたちは、OCDの診断歴がある子どもたちや、精神疾患の診断歴がない子どもたちより、答えるまでの時間のばらつきが大きいという結果でした。
正しく答えた直後や、間違えた直後の脳波にも、グループごとの違いが報告されています。
ただし、これは研究の課題で観察された、グループ全体の傾向です。一人ひとりの診断や、日常の行動の理由を、そのまま説明できるものではありません。

Q. だれを、どう比べた研究?
A. 8~18歳の310人を分析した研究です。ADHDの診断歴がある84人、強迫症(OCD)の診断歴がある90人、精神疾患の診断歴がない136人を比べました。
研究は米国のミシガン大学を中心に行われました。ここでいう「診断歴」は、生涯のいずれかの時点で診断基準を満たしたことです。研究時点の症状だけで分けたグループではありません。
子どもたちは、画面に並ぶ矢印のうち、真ん中の矢印が向いている方向を、ボタンで答えました。
例えば「→ → ← → →」と表示されたら、周りの矢印に惑わされず、真ん中の「左」を答える課題です。速く、正確に答えるように伝えられました。
研究者は、答えるまでの時間や正答率と、答えた直後の脳波を調べました。比較対象の136人は、精神疾患の診断歴がない子どもたちです。
Q. ADHDでは、反応のばらつきにどんな違いがあった?
A. ADHDのグループでは、OCDのグループや診断歴のないグループより、答えるまでの時間のばらつきが大きくなっていました。正解したときにも、間違えたときにも見られた違いです。
研究では、時間のばらつきの大きさを、平均の反応時間で割った指標を使っています。「平均して遅いこと」と「答えるたびに時間が変わりやすいこと」を分けて見るためです。
ADHDのグループでは平均の反応時間も長くなっていましたが、平均の速さを考慮した指標でも、ばらつきの違いが残りました。主なグループ比較では年齢も考慮しています。
(とても簡単にいうと、平均で何秒かかったかだけでは分からない、「毎回の答える速さがどれくらい揺れるか」にも違いがあった、ということです。)
ただし、この結果から、一人ひとりのばらつきの理由を「注意が途切れたから」と決めることはできません。
Q. OCDでは、正答率にどんな違いがあった?
A. OCDのグループは、診断歴のないグループより、課題全体の正答率が低くなっていました。一方、ADHDとOCDの間では、課題全体の正答率に統計的に明確な差は確認されませんでした。
これは「課題全体で、正しく答えた割合」の結果です。別の指標である「間違えた回数」では、OCDのグループがADHDのグループより多かったとも報告されています。回数と割合は同じ指標ではありません。
今回の課題と参加者で得られた結果なので、OCDのある子どもが、日常でもいつも間違いが多いと当てはめることはできません。
Q. 正解や間違いの直後の脳波からは、何が分かった?
A. ADHDでは正解直後の早い成分と、誤答後の少し遅い成分に違いがありました。OCDでは誤答直後の早い成分に違いがありました。また、両グループで、正解後と誤答後の少し遅い成分の差が小さくなっていました。
比較対象はいずれも、精神疾患の診断歴がないグループです。調べたのは、答えてから約0~80ミリ秒の早い成分と、約200~400ミリ秒後の成分です。ミリ秒は1秒の1,000分の1です。
ADHDのグループでは、正解直後の早い成分(CRN)が、より負の方向に大きくなっていました。一方、誤答後の少し遅い成分(Pe)は小さくなっていました。OCDのグループでは、誤答直後の早い成分(ERN)が、より負の方向に大きくなっていました。
さらに、誤答後のPeと、正解後の対応する成分(Pc)の差は、ADHDとOCDの両方で小さくなっていました。
(とても簡単にいうと、答えたあとの脳波には、正解・間違いのあとに出る成分があり、その違いの現れ方がグループごとに異なっていた、という結果です。「大きい・小さい」は測った電気的な変化の話で、能力の高低を表すものではありません。)
Q. この違いは、何を示唆しているの?
A. 著者らは、反応のばらつきと、自分の答えや間違いを確認する脳の働きがつながっている可能性を考えています。
参加者全体を使った分析では、正しく答えたときの反応時間のばらつきと、一部の脳波成分との間にも関連が見られました。年齢や診断を含む分析と、年齢や保護者が答えた行動の評価を含む分析を行っています。
著者らは、PeとPcの差が小さいことについて、答えたあとも情報を集めて「自分の答えは正しかったか」を確かめ、次の行動を調整する過程との関係を考えています。これは、結果を説明するための著者らの仮説です。
(簡単にいうと、答える速さの揺れと、答えたあとに確かめる働きとの間に、つながりがあるかもしれない、ということです。その働きがばらつきの原因だと確かめたわけではありません。)
脳波は本人の考えを直接読み取るものではありません。「間違いに気づいていない」「必要以上に気にしている」と、そのまま判断することはできません。
Q. この研究だけでは、何が言えない?
A. 一人ひとりの診断や日常の行動の理由、支援・治療の効果は判断できません。今回の傾向が、ほかの参加者や課題でも見られるか、確認が必要です。
ADHDとOCDの両方の診断歴がある子どもは、今回の分析には含まれていません。参加者は白人が中心で、性別の構成にもグループ間の違いがありました。服薬などの治療条件も統一されていません。
310人は、課題の成績などによる除外を経た分析対象です。正答率が60%未満の子どもや、誤答が10回未満の子どもは除外されています。また、極端に長い反応時間も分析から除かれました。特にADHDのグループでは、実際のばらつきを小さめに見積もった可能性があると、著者らは述べています。
各ブロックの後には、間違いの数に応じて、速さや正確さを意識するよう伝えるフィードバックもありました。その影響は調べていません。
多数の統計的な比較について、偶然の差を拾いやすくなることへの補正は行われていません。新たに報告された関連を含め、別の研究での再確認が必要です。
勉強ノートのまとめ
今回の研究は、平均の速さや正答率だけでなく、反応時間のばらつきと、答えた直後の脳波を調べました。
ADHDのグループでは反応時間のばらつきが大きく、OCDのグループでは診断歴のないグループより課題全体の正答率が低いという結果でした。脳波にも異なる特徴と、両グループに共通する違いが報告されています。
自分の答えを確認する働きと、反応の安定性とのつながりを考える手がかりになる可能性があります。ただし、その違いが日常の行動にどう結びつくかは、さらに研究が必要です。
ここからは、研究結果とは分けた、私たちの受け止めです。
子どもの様子を見るとき、一度の「できた・できなかった」だけでは、その子の状態をつかみきれないことがあります。
何度かの様子や、取り組んだ条件も一緒に見ていくことを大切にしたいと思います。この研究は、結果の平均だけでなく、ばらつきにも目を向けるきっかけになりました。
今回取り上げた論文
Hanna, G. L., Liu, Y., Hanna, B. S., Arnold, P. D., & Gehring, W. J.(2026)
“Reaction Time Variability and Electrophysiological Indices of Performance Monitoring in Youths With Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder and Obsessive-Compulsive Disorder.” Psychophysiology, 63(9), e70403.
オンライン公表日:2026年9月24日。原著確認日:2026年10月2日。

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