なぜだか、学校に行きたくない。
朝になると、お腹や頭が痛くなる。
休む日が続き、少しずつ生活の時間もずれていく。
外から見ると、「やることもやらずに、気ままに過ごしている」ように見えることもあるかもしれません。
そんな毎日を前にすると、親の中にも「私の育て方が悪かったのかもしれない」と「早く学校へ戻さなきゃ」という、二つの気持ちが浮かぶことがあります。
仕事との両立が難しくなり、余裕がなくなって、子どもへ強く言ってしまう。
そして、あとから自分も落ち込む——。
この記事では、学校以外にある居場所のひとつ「教育支援センター」について、福祉の現場で働く私たち夫婦の実感を交えてまとめました。

「一緒になら行ける」——小学生の頃の、私自身の思い出から
これは制度の話に入る前に、少しだけ聞いてほしい私自身の話です。
小学生のころ、クラスに・学校に来られなくなった子がいました。ある日、先生から「ゆるきりんが迎えに行ってくれるなら、学校に行くと言っている」と頼まれて、一緒に登校するようになったことがあります。
それからしばらくして、気づいたら立場が逆になっていました。今度は寝坊して遅刻しそうな私を、その子が迎えに来てくれるようになっていたんです(笑)。
大人になった今振り返ると、あの頃のあの子に必要だったのは、正論でも急かす言葉でもなかったのかもしれません。
「一緒に行ってくれる誰か」と「安心して過ごせる場所」。
学校へ行きづらい子を支える場所も、根っこはこれと似ているように感じています。
「行かせなきゃ」が先に立つと、見えなくなるものがあります
学校へ行けない我が子を見ていると、「なんとか行かせなきゃ」という気持ちが、どうしても先に立つことがあります。
それ自体は、子どもの先を心配するからこそ出てくる、親として自然な気持ちだと思います。
ただ、大人には先の見通しがあるからこそ、かける言葉があります。
その言葉が、いま目の前の一日を過ごすことに精いっぱいの子にとっては、とても高いハードルになることもあります。
大人には「大したことではない」と見えることが、その子にとっては大ごとかもしれません。
学校へ行きづらくなる背景は、勉強、友達関係、いじめ、心身の不調、発達特性、生活環境の変化など、一つではないかと思います。
いくつかの事情が重なっていることもありますし、本人にも理由をうまく説明できないことがあります。
大切なのは、大人の側で「行けない理由」を一つに決めないことだと思います。
学校へ行けないことを、怠けや甘えだけで説明することはできません。
国の不登校支援でも、目指すものは学校へ戻すことだけではなく、本人の社会的な自立とされています。
学校へ戻ることだけが、「うまくいった」のゴールではありません。
きょうだいがいる家庭では、家の中の過ごし方が変わり、きょうだいも戸惑うことがあります。
家族それぞれに違う反応が出ることも含めて、誰か一人のせいにせず整理していくことが大切だと感じています。
教育支援センターは、学校の外にある「もうひとつの居場所」です
教育委員会が運営する、学校の外の公的な支援場所です
教育支援センターは、教育委員会などが学校の外に設置・運営する公的な支援場所です。
以前は「適応指導教室」と呼ばれることが多かったのですが、現在は教育支援センターという名称が広く使われています。
対象は、主に小中学校へ通いづらい、不登校または不登校傾向の子どもたちです。
相談、学習、少人数での活動などを通して、本人の社会的な自立につながる支援を行います。
対象学年や利用までの流れは自治体によって異なります。
利用条件や費用、通い方は自治体によって異なります
教育支援センターは公的な支援場所ですが、利用条件、費用、開室日、通える回数などは全国一律ではありません。
利用料のほか、教材費や活動費などが必要かどうかも含め、お住まいの地域の案内を確認すると安心です。
一定の要件を満たすと、校長の判断で出席扱いになることがあります
文部科学省の通知では、一定の要件を満たす場合、教育支援センターなど学校外の施設で相談・指導を受けた日を、指導要録上の出席扱いにできるとしています。
出席扱いになるかどうかは、保護者と学校の連携、施設での支援内容などを踏まえ、校長が個別に判断します。
そのため、通えば必ず出席になるとは限りません。
ただ、教育支援センターへ通うことが、状況によっては学校とのつながりや、本人の学びを記録に残す方法の一つになることは知っておいてもよいと思います。
この仕組みは、学校復帰を急かすためではなく、社会的な自立へ向かう本人の努力を評価し、支えるためのものです。
名前は自治体によってさまざまです
「教育支援センター」のほかに、「適応指導教室」や自治体独自の名前が使われていることもあります。
また、学校の中に、教室とは別の落ち着いて過ごせる場所として「校内教育支援センター」が設けられている場合もあります。
相談の入口は、在籍している学校か、お住まいの地域の教育委員会です。
具体的には、こんなことをしてくれます(一例)
「行けるかどうか分からないけど、まず何をする場所なの?」という疑問に、代表的な中身をお伝えします。
① 学校以外の「居場所」があります
大人数の教室とは違う、少人数の落ち着いた空間で過ごせる場所があります。
最初から毎日通うことを目標にせず、見学や相談から始められる地域もあります。
② 学習のサポートをしてくれます
在籍している学校と連絡を取りながら、本人の状態やペースに合わせて学習を進める支援があります。
③ 少人数での関わりがあります
大人数の教室では緊張してしまっても、少人数なら過ごし方が変わる子もいます。
個別の活動だけでなく、本人の状態に合わせて、少人数での活動や体験を取り入れる場合があります。
④ 在籍している学校と連携してくれます
本人や保護者の意向を確認しながら、在籍している学校と様子や学習の状況を共有します。
センターだけで抱えず、学校や必要な関係機関と一緒に支えるための連携です。
⑤ 親の相談にも応じてくれます
教育支援センターは、子どもが通う場所であると同時に、保護者が相談できる窓口でもあります。
子どものことだけでなく、家庭で困っていることや、親自身のしんどさも相談の中身になります。
ただ、ここまでに挙げた支援の内容や利用方法、センターの雰囲気には、自治体や施設による違いがあります。
全部が全部そろっているとは限らないため、まず見学や相談で、実際の様子を聞いてみるのがよいと思います。
私の知っている自治体では心理士が相談に乗ってくれています。
「行けない理由」は、ひとつではありません——背景を一緒にひも解いていきます
ここまで「不登校・行き渋り」を中心に書いてきました。
現場で関わっていると、「学校に行けない」は表に見えている状態で、その背景にはいくつもの事情が重なっていると感じることがあります。
たとえば、発達特性が関係している場合は、音や光、人の多さ、予定の変化、言葉の受け取り方など、本人がどこで困っているのかを整理します。
そのうえで、「どんな環境なら過ごしやすいか」「どう伝えると分かりやすいか」を、本人や家庭、学校と一緒に考えていきます。
発達の気がかりについては、前回の記事(児童発達支援センター)で書いた「得意と苦手の地図」の考え方が、就学後にもつながっていくイメージです。
勉強や友達関係、いじめ、心身の不調、家庭や生活環境の変化など、ほかの事情が関係していることもあります。
学校では、出席や学習の状況が目に入りやすい一方で、その子の得意なことや人となりが見えにくくなる場面もあります。
「行けない理由」を決めつけず、いま困っていることを一緒に整理して、その子に合う方法を探していく。
それが、支援の中身だと思います。
スクールカウンセラー(SC)とスクールソーシャルワーカー(SSW)という強い味方
背景を一緒に整理する場面では、スクールカウンセラー(SC)やスクールソーシャルワーカー(SSW)が関わることがあります。
SCは心理に関する支援を担当し、子どもへのカウンセリングや見立て、保護者や教職員への助言・援助などを行います。
SSWは福祉に関する支援を担当し、本人や保護者の希望を確認しながら、学校、家庭、教育支援センター、福祉機関などとの連携や調整を行います。
配置や相談方法は地域・学校によって違います。
在籍している学校や教育委員会へ、「SCやSSWに相談できますか」と聞くところから始めても大丈夫です。
(私の知っている範囲では、SSWは学校が必要性を感じたときに、SCは保護者や子どもからの発信をきっかけに、支援が始まることがありました。ただし、一律の運用ではないため、詳しくはお住まいの自治体や学校にご確認ください。)
似たような場所が多くて紛らわしいので、整理します
学校に行けない子どもの居場所には、いくつか似た名前の選択肢があります。ここで、ざっくり整理しておきます。
| 名称 | ざっくり言うと |
|---|---|
| 教育支援センター(適応指導教室など) | 教育委員会などが学校外に設ける公的な支援場所。一定の要件を満たすと出席扱いになることがあります |
| 校内教育支援センター(校内別室など) | 在籍している学校の中にある、教室とは別の落ち着いて学べる場所です |
| 学びの多様化学校(旧・不登校特例校) | 不登校の子どもの実態に配慮した特別な教育課程を組む学校です |
| フリースクールなどの民間施設 | 運営方針や活動内容は施設ごとに異なります。一定の要件を満たすと出席扱いになる場合があります。費用は施設によって大きく異なります。 |
どれが正解ということはありません。
本人の状態や希望、通いやすさ、学び方、費用などを見ながら、合う場所を一緒に探していきます。
教育支援センターも、その選択肢の一つです。
効果が見えるまでの時間は、一律ではありません
ここは、現場で感じてきたことです。
就学前から関わっていた複数の機関が、就学のタイミングで集まり、子どもへの支援と家族への支援を一緒に引き継いだ家庭に出会ったことがあります。
焦らず一年以上かける中で、少しずつ落ち着いて過ごせる時間が増えていきました。
一方で、支援につながっても、すぐに変化が見えないこともあります。
関わる人との相性、支援を始める時期、提案された方法が本人や家庭に合うかどうかは、一概には言えません。
変化を待つ時間を、家族だけで耐える話にしないことも大切だと思います。
「すぐに効果が出ない=合っていない」ではありません。
子どもも大人も、安心できる人や場所と関係をつくるペースは一律ではありません。
まとめ——学校へ戻すことだけを急がず、外の居場所を知っておく
「行かせなきゃ」をいったん脇に置いて、まずは学校以外にどんな居場所があるかを知る。
教育支援センターは、そのための相談先と居場所の一つです。
あの日、私が迎えに行っていたクラスメイトは、いつの間にか私を迎えに来てくれるようになっていました。
人なのか、場所なのか、共通の趣味なのか。
ほんの少しのきっかけで、関係や見える景色が変わることがあります。
そのきっかけを、学校と家庭だけで探さなくてもいいのだと思います。
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未就学のお子さんの発達が気になる方向けの記事、乳幼児期からの相談窓口の記事も、あわせてどうぞ。
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▶ 妊娠・出産、寝られない、つらい、誰に相談すればいい?〜親のことも子のことも相談できる子ども家庭支援センター
これらの機関がどうつながっているのかについては、こちらの記事でまとめています。(順次公開予定)
▶ どこに相談すればいいか、もう迷わなくていい〜3つの窓口をつなぐ『こども家庭センター』と、連携という安心の仕組み
制度は自治体によって運用が異なり、改定されることもあります。注意深くまとめていますが、誤りがあれば都度修正します。実際の利用にあたっては、お住まいの教育委員会や在籍している学校など関係機関にご確認いただけますと安心です。
※この記事は、夫婦の現場経験をもとに書いています。
ゆるきりん🦒

