知らなかっただけで、申請すらしていなかった
ある日、私が支援していた方から相談を受けました。
精神疾患を抱えながら、家族を養いながら、毎日をなんとか生き抜いていた方です。
障害年金という制度を知らなかったため、申請すらしていませんでした。
一緒に申請を進め、受給が決まった時、こう言ってくれました。
「良かった。ありがとうございました。」
その方には高校進学を控えた娘さんがいました。
障害年金は間接的に家族の生活を支え、進学への不安を減らすことにもなりました。
知っているか、知らないかで、人生や生活は変わります。
この記事は、そのことを伝えるために書きました。
申立書は、生活の実態を伝える大切な書類
障害年金の申請には複数の書類が必要です。
その中に「病歴・就労状況等申立書」という書類があります。
日本年金機構では、この書類を障害状態を確認するための補足資料として案内しています。
ただし、補足資料だからといって軽く見ていいわけではありません。
診断書は医師が書きます。
でも、毎日の生活でどれだけ困っているかを伝えられるのは、本人や家族、支援者が書く申立書です。
診断書が”医学的な評価”なら、申立書は“生活実態を伝える資料”です。
両方そろって、認定の判断材料が整います。
精神障害の等級判定は、診断書と申立書を合わせて見る
精神障害の等級は、診断書だけで機械的に決まるわけではありません。
厚労省の等級判定ガイドラインでは、診断書にある「日常生活能力の判定」と「日常生活能力の程度」を中心に、総合的に判断する仕組みが示されています。
つまり、認定では「日常生活でどの程度支障があるか」がとても重視されます。
そのとき、申立書は生活の実態を補う重要な資料になります。
精神障害の等級判定は、7項目と総合評価で見る
診断書には、以下の7項目について認定医が評価する欄があります。
| 評価項目 | 具体的に見られる内容 |
|---|---|
| 適切な食事 | 食事の準備・摂取が自分でできるか |
| 身辺の清潔保持 | 入浴・洗面・着替えが自分でできるか |
| 金銭管理と買い物 | 日常的なお金の管理・買い物ができるか |
| 通院と服薬 | 定期的な通院・服薬が自分でできるか |
| 対人関係 | 家族・友人・職場等との関わりが持てるか |
| 安全保持 | 危険から身を守る判断・行動ができるか |
| 社会性 | 社会的なルールや集団生活に適応できるか |
申立書でこれらに対応した生活の実態を書くことで、診断書の内容を補うことができます。
令和8年4月30日に公表された調査結果でも、精神障害では判断が難しい事例があることを踏まえ、不支給事案は複数の認定医で審査し、判断が分かれる事案は認定審査委員会で判定する運用に見直す方針が示されました(令和7年10月以降、順次実施予定)。
だからこそ、申立書で生活の実態を具体的に伝えることが大切です。
「たまにできる」は、できているとは限らない
ここに大きな落とし穴があります。
日本人特有の謙遜や遠慮が、書類の内容を弱くしてしまうことがあります。
「少しでもできるなら、できるにしておこう」
そう考えがちですが、障害年金では、安定してできるかどうかが大事です。
たまにできる日があっても、できない日があるなら、その事情を含めて書く必要があります。
「できる」「できない」を雑に二択で決めるのではなく、どんな頻度で、どれくらい援助が必要かを見ていきましょう。
「どのようにできないか」を書くと伝わる
社労士に申立書を見てもらった時、こう言われました。
「もっと具体的に書いてください」
漠然とした表現は、審査する側に伝わりにくいです。
大事なのは、「できない」という結論だけでなく、「どのようにできないか」を書くことです。
【入浴】
| ❌ ビフォー | 「お風呂に1人では入れない」 |
| ✅ アフター | 「入浴の準備や入る気力が続かず、数日まとめて入れないことがある。シャワーだけの日もあれば、体を拭くだけで済ませる日もある。家族が仕事で不在のため、声かけや見守りがないと入浴を先延ばしにしてしまう。」 |
【洗濯】
| ❌ ビフォー | 「洗濯は1人では難しい」 |
| ✅ アフター | 「洗濯機を回すことはできるが、干す、取り込む、たたむ、しまうまでを一人で継続することが難しい。洗濯物がたまってしまい、必要な衣類だけをその都度使うことがある。」 |
【掃除】
| ❌ ビフォー | 「家の中の掃除や清潔さが保てない」 |
| ✅ アフター | 「部屋の片づけや掃除を継続して行うことが難しく、生活空間が散らかりやすい。必要な物を探せなくなったり、掃除の途中で疲れて止まってしまうことがある。」 |
「できない」とだけ書くよりも、
「何が、どこまで、どんなふうに難しいのか」を書く方が伝わります。
受給までのタイムライン|逆算して動く
申請を思い立ったら、早めに動いてください。
理由は、書類がそろうまでに時間がかかるからです。
STEP 1|年金事務所の予約
→ 1〜2か月先になることがあります。
⏰ 思い立ったら、すぐ予約するのが安全です。
STEP 2|医師への診断書依頼
→ 早くても1〜2週間、長いともっとかかることがあります。
⏰ 予約日から逆算して、早めに依頼しましょう。
STEP 3|書類準備・申立書記入
→ 病歴・就労状況等申立書は、発病から現在までの流れを整理しながら書きます。空白期間が出ないように、経過を確認しておきましょう。
STEP 4|年金事務所で申請
→ 必要書類をそろえて提出します。
STEP 5|審査(一般に3〜4か月ほど)
→ ただし、準備期間を含めると全体ではもっと長くなることがあります。
STEP 6|受給開始
実際のケースでは、8月に動き始めて1月に受給開始でした。トータルで約6か月かかったことになります。
窓口に行く前に準備するもの
最悪、手ぶらで行っても大丈夫です。ただし以下のものがあると手続きが進めやすくなります。
- 障害者手帳(*障害者手帳がなくても申請できます)
- 年金手帳または基礎年金番号がわかるもの
- お薬手帳
- マイナンバーカード
- 配偶者がいる場合は配偶者の情報
正確な必要書類は日本年金機構の公式サイトで確認してください。
社労士への相談という選択肢
申立書は自分でも、家族でも書けます。
ただ、第三者に見てもらうと、抜けや弱さに気づきやすくなります。
私は事前に社会保険労務士にチェックしてもらいました。プロに見てもらう価値はありました。
市区町村によっては無料で社会保険労務士相談ができる場合もあります。
住んでいる地域の役所に問い合わせてみてください。
受給後のお金の使い方も考える
受給が決まったら、次はお金の使い方を考えることも大切です。
障害年金は生活を安定させるための制度なので、受給後の家計設計まで考えると、安心感が増します。
【PR】FP無料相談はこちら

まずどこに連絡すればいい?
住んでいる地域の役所に電話してください。
「障害年金の申請について相談したい」と伝えれば、担当につないでもらえます。
どの課にかけても大丈夫です。代表番号でも問題ありません。
窓口の担当者は思っている以上に親切です。
書類で分からないことがあれば、その場で教えてもらえることもあります。
まず電話する。それだけで十分です。
おわりに
申請した方が、こんな言葉を残してくれました。
「知らなかったから、こんなものがあるなんて思ってもみなかった。助かりました。」
その方の障害年金は、本人だけでなく娘さんの高校進学も間接的に支えました。
生活の不安が減ることで、気持ちの負担が軽くなることもあります。
活用できる制度は、しっかり活用していきましょう。穏やかな生活、自立した生活につながります。
一緒に前に進みましょう。
※この記事の内容は筆者の実務経験に基づくものです。
正確な制度内容や必要書類は、日本年金機構の公式サイトをご確認ください。
申告内容は、必ず事実に基づいて記載してください。


コメント