赤ちゃんが生まれたら、毎日幸せいっぱい。……のはずが、現実は「わからないことだらけ」でした。
ほとんど寝られない。泣き止まない理由がわからない。自分の体もボロボロ。
それなのに、誰も「こうすればいいよ」とは教えてくれない…という感覚に陥りました。
この記事では、そんなときに「親のことも、子どものことも」相談できる子ども家庭支援センターという場所について、福祉の現場で働く私たち夫婦の実感を交えてまとめました。
妊娠・出産は「わからないことだらけ」になりがちです
わが家の話です。妊娠がわかって、うれしい気持ちの一方で、正直「え、ここからどうなるの?」の連続でした。
初めてのことなのに、教科書もマニュアルもない。(色々資料をもらってはいるんですが…分厚過ぎて全てに目を通さなかったのはあるのですが…)
母子手帳をもらって、健診に行って……その先の「生まれてからの生活」については、誰も詳しく教えてくれないまま出産日が来てしまう。そんな感覚がありました。(母方祖母が駆けつけてきてくれたのは、出産直後が一番大変だからとわかっていたからなのだと、後々わかりました。感謝です。)
そして生まれてからが本番でした。2〜3時間おきの授乳で、まとまって寝られない日が続く。
寝不足って、思っている以上に心を削るんですよね。些細なことでイライラしたり、涙が出たり、「自分、ちょっとおかしくなってきてるかも」「このままだとノイローゼになる…」と感じる瞬間が何度もありました。
いま振り返ると、あれは私たちだけが特別だったのではなく、初めての妊娠・出産・育児は「わからなくて当たり前」「大変で当たり前」なのだと思います。ただ、渦中にいるときは、それすらわからないんだと思います。
父が育休をとって夫婦2人がかりでもてんやわんやでした…もし1人で全てをこなすと思うとゾッとしますし、そうせざる得ない方々には尊敬の念と社会的に支える制度が必須であると強く感じます。まだまだ支援が足りないです。ぶっちゃけ金銭的な援助だけでもあればだいぶ違うと思います。
福祉の仕事を20年していても、この機関をちゃんとは知りませんでした
ここで少し恥ずかしいのですが…
私は仮にも福祉の現場で20年ほど働いてきました。それでも、「子ども家庭支援センター」という機関がどんな場所で何をしてくれるのか、ちゃんと知ったのは、子育て支援に関わる部署で働き始めてからでした。
福祉を仕事にしている人間ですらこうなのだから、初めての子育てで手いっぱいの方が知らないのは、当然のことではないでしょうか。
「知っていさえすれば、手が打てたのに」——福祉の現場にいると、そう感じる場面に何度も出会います。
(このシリーズは、その「知っていさえすれば」を1つでも減らしたくて書いていきます。)
子ども家庭支援センターは「子育ての困りごと全般」の入口になることがあります
「子ども家庭支援センターって、よほど大変な家庭のための場所でしょ?」「ん?何をしてくれるの?何ができるの?どこにあるの?」——そう思っている方は少なくない気がします。私は名前だけ聞いたときはそんなイメージでした。
でも実際は、もっとずっと手前の段階から使える場所です。夜泣きがつらい、寝られない、上の子にきつく当たってしまう、なんとなくしんどい。そういう「病院に行くほどではないけど、誰かに聞いてほしい」レベルの困りごとから相談できます。
しかも、相談できるのは子どものことだけではありません。自治体によっては、ひとり親家庭のこと、配偶者との関係(DV)のこと、離婚のことなど、親自身の悩みも相談の対象に含まれています。「子どもの機関だから親の話はダメ」ではないんですね。
子育て・家族にまつわることであれば、まずは電話でも窓口にでも駆け込んでみてください。(内容によっては別の相談窓口での相談かもしれないですが、話を聞いて案内してくれるはずです。安心して戸を叩いてみてください。)
具体的には、こんなことをしてくれます(一例)
「相談できます」だけだと、ちょっとイメージが湧きにくいですよね。自治体によって中身は変わりますが、代表的なものを挙げてみます。
① 話を聴いて、一緒に整理してくれます
一番基本の機能です。相談員・保健師・心理士などの専門職が、じっくり話を聴いてくれます。
「で、どうすればいいの?」の前に、まず「何がしんどいのか」を一緒に言葉にしてくれる場所、という感じです。
これだけで気持ちが軽くなる方も少なくない印象です。
② 使える制度やサービスを案内してくれます
困りごとに合わせて、「それならこういうサービスがありますよ」と具体的に教えてくれます。
子育ての制度は数が多くて、自分で調べて探し当てるのはかなり大変なので
「制度の案内所」として使えるのが大きいと個人的には思っています。
③ 子どもを預かってもらえる仕組みにつないでくれます
たとえば、保護者の病気や出産、疲れがたまってどうしようもないときに
子どもを短期間預かってもらえる「ショートステイ」
数時間だけ預かってもらえる「一時預かり」
地域の方が送迎や預かりを手伝ってくれる「ファミリー・サポート」
こうした事業の窓口や入口になっていることがあります。
ただし、対象年齢・利用できる時間や日数・料金・利用の要件は、自治体によってかなり違います(非課税世帯は無料になる、といった減免も自治体によります)。
④ 親子で行ける「ひろば」をやっていることもあります
センターによっては、親子で遊びに行ける交流スペースや子育てひろばを併設しています。
「相談」と構えなくても、遊びに行ったついでにスタッフと立ち話——という入り方ができるのは、敷居として一番低いかもしれません。
イメージとしては、昭和のイメージですが、「子供を遊ばせている傍らで、近所の気のいいおじさんおばさんが、なんだい?どうした?そうかそうか」と甲斐甲斐しく家族丸ごと受け止めてくれる感じです笑
⑤ 必要なときは、他の機関との橋渡しをしてくれます
医療機関や保育園、より専門的な相談機関など、状況に応じて適切なところへつないでくれます。
「どこに行けばいいかわからない」状態でも、とりあえずここに聞けば交通整理をしてもらえるイメージです。
ひとつ正直に書いておくと、こうしたサービスの充実度には自治体差があります。手厚いところもあれば、まだこれからのところもあるのが実情です。「記事で読んだのに、うちの自治体にはなかった」とがっかりさせてしまうのは本意ではないので、ここに挙げたのは「あるかもしれないメニューの例」と受け取ってもらえたらと思います。
ただ、何があるかを教えてもらうこと自体が、最初の相談の立派な中身になります。
ごく簡単にいうと…子育てに関することをなんでも相談していい!
ひとまず、全部を覚える必要はまったくなくて、「話を聴いてくれて、必要なものにつないでくれる場所」とだけ覚えてもらえれば十分だと思います。
どんな人が、いつから使えるのか
対象は「0歳から18歳未満の子どもと家庭」が基本
自治体の案内を見ると、対象は0歳から18歳未満の子どもとその家庭、とされていることが多いです。たとえば東京都北区の案内には、こう明記されています。
「乳幼児だけ」でも「就学したら終わり」でもなく、18歳未満まで幅広く対象になっています。子ども本人からの相談を受け付けている点も、個人的には大事なポイントだと感じています。
ただし、ショートステイや一時預かりなどの個別の事業には、それぞれ細かい年齢区分があることが多いので、そこは利用時に確認が必要です。
妊娠中からの相談を受けている自治体もあります
たとえば東京都港区では、妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援を掲げていて、妊娠中の方も相談の対象に含まれています。「生まれてから」ではなく「生まれる前」から頼れる場所として案内している自治体もある、ということです。
おおむねどの自治体も上記の切れ目のない支援を目指して始動しているかと思います。
費用はかからず、名称は自治体によって違うことがあります
相談そのものにお金がかかるという案内は、私が確認した範囲では見当たりません(ショートステイなど個別の事業を利用する場合は、料金がかかることがあります)。受付時間は自治体によりますが、平日だけでなく土日も相談を受けているところもあります(北区の場合は年末年始・祝日等を除く月曜日から日曜日、9時30分から17時まで)。
ひとつ注意したいのは、「子ども家庭支援センター」という名前は主に東京都内の呼び方で、お住まいの地域では別の名称になっていることがある点です。探すときは「お住まいの自治体名+子育て相談」で検索するか、市区町村の子育て担当窓口に「子育ての総合相談ができる場所はありますか」と聞いてみるのが確実だと思います。
まぎらわしい「似た名前の機関」を一度だけ整理しておきます
この分野、名前がとても紛らわしいんです。働いている側でも混乱するくらいなので、ここで一度だけ整理しておきますね。
| 名称 | ざっくり言うと |
|---|---|
| 子ども家庭支援センター | 子どもと家庭の身近な相談窓口(この記事の主役) |
| こども家庭センター | 母子保健と児童福祉を一体で担う、市区町村の中核拠点(2024年度から全国で整備が進行中) |
| 児童家庭支援センター | 児童相談所を補完する、より専門的な相談機関 |
それぞれの違いや連携の話は、このシリーズの最後の記事で書く予定です。
今は「名前が似た機関がいくつかあって、どれも子どもと家庭を支えるための場所」くらいの理解で大丈夫だと思います。
相談したら何が起きるのか——大ごとにはならないことがほとんどです
「相談したら、問題のある家庭だと思われるんじゃないか」「何か大ごとになるんじゃないか」——相談をためらう理由として、これが一番大きいのではないでしょうか。
実際には、相談の多くは「話を聴いてもらって、少し整理がついて、また日常に戻っていく」というものです。
相談員や保健師などの専門職が話を聴いて、必要に応じて、本人と相談しながら使えるサービスや窓口を案内してくれる。そういう流れが基本です。
秘密についても、北区の案内には「相談内容についての秘密は、すべて守られます」と明記されています。相談したことが勝手に周りに知られる、という心配はいりません。
むしろ現場の感覚で言うと、「こんなことで相談していいんですか」と恐縮しながら来られる方もいらっしゃいます。相談すること自体が、子どもと自分のためになる行動なのだと、私は考えています。
まずは「探してみる」だけでもいいのかもしれません
ここまで読んで「うちの近くにもあるのかな」と思った方は、まず検索してみるだけでも一歩です。電話をかけるのはハードルが高くても、場所と電話番号をスマホにメモしておくだけで、「いざとなったらここがある」というお守りになります。
ちなみに、「相談先を探すこと自体がもう大変」という方向けに、当ブログでは質問に答えていくだけで相談先の候補がわかる無料ツールを作っています。よかったらこちらも見てみてください。
▶ 「どこに相談すればいいかわからない」を解決したくてツールを作りました
お子さんの成長に合わせて読める記事も用意しています。(順次、公開中です)
▶ 何度言っても伝わらない、癇癪(かんしゃく)にイライラ、うちの子何か違う?〜『様子を見ましょう』の先にある児童発達支援センター
▶ なぜだか学校に行きたくない、朝になると不調になり、いつしか昼夜逆転生活に。休ませていいの?〜学校の外にある居場所『教育支援センター』
▶ どこに相談すればいいか、もう迷わなくていい〜3つの窓口をつなぐ『こども家庭センター』と、連携という安心の仕組み
寝られなくてつらいとき、誰かに聞いてほしいとき、思い出してもらえたらうれしいです。
困り果ててからではなく、「ちょっとしんどいかも」の段階で使ってもらうのが最適な場所です。
知っていさえすれば、手が打てた。そう思う場面を、ひとつでも減らせたらと考えています。
*制度は自治体によって運用が異なり、改定されることもあります。注意深くまとめていますが、誤りがあれば都度修正します。実際の利用にあたっては、お住まいの市区町村の窓口など関係機関にご確認いただけますと安心です。
※この記事は、夫婦の現場経験をもとに書いています。
ゆるきりん🦒

